ドラえもんの大長編「のび太の魔界大冒険」という作品について、テーマとしてなかなか面白いかな、と思ったのでこの作品について、少し考察をして見たいと思います。
考察の視点は主に二点です。
・子供のころの視点ではどんな点が面白かったのか?
・大人になった視点ではどんな点が面白いと思っているのか?
注意!
これは原作の「大長編」での考察であり、ネタバレも含みます。
また、あらすじは飛ばして書くので、もしあらすじをご存知でない方は、先に原作を読んでいただくことをお勧めします。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用
この作品における魔法とは何か?
この作品を考察するにあたって、この作品の「魔法」の位置づけを考えてみます。
魔法とは?(ニコニコ大百科(仮)より引用)
https://dic.nicovideo.jp/a/%E9%AD%94%E6%B3%95
これを見ると「普通の人間には使うことのできない能力や不思議な現象を指す。」とあります。
この作品では、「空を飛ぶ」、「ものを触れずに動かす」、「手から炎を出す」、「突然雷を落とす」などの能力が出てきますが、念力や自然現象を操った魔法が主で、人体を思念だけで破壊したり、意のままに操ったり、世界を壊すほどの魔法は無い(あっても本作には出てこない)と考えてみます。
この作品の本編は、もしもボックスで、「もしも魔法の世界になったら」というところから物語が始まるのですが、そもそもドラえもんって魔法が無くてもそういうことできるじゃん!って思います(笑)
まあそれは置いといて、「何でも思い通りにできる能力」ではないと考えて進めます。
子供の頃に面白いと感じた点
では、自分が子供のころに面白いと感じた点を整理して並べてみます。
- 魔法と科学が逆転された世界観
- 一旦終了と思いきや、パラレルワールドに気付いて修正する展開
- 王道RPGのようなストーリー
- ドラミちゃんが手助けする点
それぞれについて、少し掘り下げて面白い点を考察していきます。
魔法と科学が逆転された世界観
まず本作の大きな魅力でもある「魔法と科学が逆転された世界」です。
この作品では、現実世界では魔法が迷信とされているのに対し、魔法世界では科学が迷信とされています。
魔法世界では普段の生活には魔法が溶け込んでいます。
チョークを持ったり、テレビを付けたり、コンロに火をつけたり…魔法が無いと生活ができない世界になっています。(但し、のび太はなぜか魔法が全く使えない状態で、その世界に放り込まれている)
この世界に科学の結晶ともいえるドラえもんの秘密道具を持ってきたとき、魔法世界に暮らす人々は驚くわけです。
タケコプター、ひらりマント、石ころ帽子、等々おなじみの秘密道具が出てきますが、その一つ一つを見て驚くと共に、それを受け入れる訳です。
ここは子供ながらに面白いと思いました。考えたらドラえもんの道具も魔法みたいですよね(笑)だから素直に受け入れられたのかもしれません。
で、物語ではその「魔法」と「迷信である科学」が共に力を併せて敵に立ち向かう、という描き方をしているので、ここは熱いな~と思います。
作品中でも「魔法」と「科学」は元々同じもの、と出木杉くんが説明しており、藤子F先生もあとがきで書かれていますが、突き詰めていくと「同じところにたどり着く」ということが言えると思います。
なのに「やっぱり魔法が使えたら」という思いを作品で見事に表現されているところが凄いと思います。
一旦終了と思いきや続く展開
この作品は一旦途中で元の世界に戻そうとして「のび太の魔界大冒険 おわり」ってなるんですが、ふとのび太が気付きます。
「魔法の世界ってどうなるの?」という疑問に対して、ドラミちゃんが「パラレルワールドになって、元の世界とは別の平行世界でそのまま続く」という説明をします。
それに対してのび太は「それじゃちっとも解決にならないじゃないか!」ということで元に戻すのを保留するわけです。
この、やっぱり平行世界も元の世界も平和にしてから物語を閉じる、という点がしっかり描かれており、飽きない展開になっているな、と思います。
やはりここでも、のび太の優しさや勇敢さが見えますし、子供の時はこの一旦終わりと見せかけて実は続く展開、に新鮮さを覚えました。
他の大長編でもこのような展開はあまりないので、他にない面白さを感じた点です。
王道RPGのようなストーリー
仲間と冒険をして、途中色々な別れや困難を乗り越えて、最終的に魔王を倒す、という王道RPGそのもののストーリーであり、これは自分がとても好きな点です。
また、魔王に一度挑むが敗れる、という点も好きです。
一度敗れたが、もう一度作戦を練り直して、再度挑んで勝利する、というストーリーは他のRPG要素を持った漫画ではよくあるパターンですが、この作品を読んだときは本当に新鮮な気持ちでした。
ドキドキ、ワクワクという言葉がピッタリで、諦めない心、努力すれば報われること、負けた時は作戦を練り直すこと、仲間と力を併せる大切さ、等々…大事なことがたくさん学べる作品だと思っています。
ドラミちゃんが手助けする点
今ではドラミちゃんがドラえもんの映画に登場するのはよくあるパターンですが、ドラえもんの映画では初めてドラミちゃんが出てきた作品であり、ドラミちゃんがいなかったら解決できなかったストーリーの一つです。
ドラえもんとのび太が石になってしまったので、ドラミちゃんが登場して救うわけですが、ドラミちゃんが出てきたときの安心感が凄いです(笑)。
藤子F先生はタイムマシンを使ったり、ドラミちゃんを登場させての解決方法はちょっと気にされていたようですが、自分は今まで無いパターンにワクワクしていました。
最終的にドラミちゃんがビッグライトでジャイアンが投げた銀の矢を大きくして、魔王の心臓の星を破壊するのも、魔法と科学が力を合わせる構図になっていて、とても好きだし面白いな、と思います。
大人になって面白いと思う点
大人になってから面白いと思った点は、子供の視点と異なるもののみ記載します。大人になっても子供視点で面白いと思った点は好きです(笑)
- 一般人の生活が現実世界と近い描き方をしている点
- 科学と魔法の力でラスボスを倒す点
一般人の生活が現実世界と近い描き方をしている点
まず、大人視点で面白いのはここです。
魔法の世界といっても、テレビはあるし、住居や衣服などは今の現実世界とほぼ同じものです(テレビやコンロなど魔法の力が無いと使えないものもありますが)。
この世界では科学が迷信なので、これらのものも魔法の力で発展して開発されたものであると思われます。
テレビの電波や内部構造はどうなってるんだろう?とつい勘ぐってしまいます(笑)まあここはファンタジーなのであまり深く考えなくていいかもしれません。
興味深いのは、社会構成です。のび太のパパも会社で仕事をしているので、企業があり、会社があり、雇用者と労働者がいる、という社会構造は現実世界と同じと考えられます。
で、この魔法世界での仕事ってどんな感じなんだろう?という疑問がでてきます。
魔法世界での仕事って、当然魔法が使える者同士で仕事をするので、今の現実世界でやっているような配達、物流の仕事は大きく違うと思います。多分魔法の能力が高いと重いものを運んだり、遠くに運んだりできる=給料が多い、のではないかと思います。
そして貨幣経済であり、経済活動は現実世界と同じなんだろう、と思われます。
また、動植物が人間にわかる言語を話したりもするので、農林水産や酪農の仕事も、動植物と話をしながら進めるのかな、と思ったりします。
現実世界と似てるけど、細かいところで異なっている社会、としているところが変に現実味を帯びてて楽しいと思います。
科学と魔法の力でラスボスを倒す点
子供視点のところにも書きましたが、大人視点は少し違う見方をしてみます。
魔法世界では科学を信用しない展開にして、最終的に科学が魔法に打ち勝つ、みたいな展開にもできたかもしれませんが、この作品は迷信とされた科学を美夜子さんや満月博士は受け入れています。
この魔法の第一人者ともいえる満月博士が科学を受け入れている点は、素直に凄いな、と思います。
現実社会で考えた時、科学者は魔法や超能力が本当にあった場合、受け入れるでしょうか?
受け入れる人もいるかもしれませんが、多分かなり実験などで検証を行うでしょうね。
このように考えると、ストーリー的に魔法と科学が共存した戦い方は、単に胸熱なだけでなく、受け入れてくれた仲間も凄いな、と思います。
で、これは子供だし素直に受け入れられた、という見方もできます。のび太の学校の先生も「魔界接近説」を信じていませんでしたし、普通の大人と戦っていたら上手く共闘できなかったかもしれません。
最後に
この作品の魅力は他にもあるでしょうが、一旦ここまでとします。
魔法を扱っているが、単純なファンタジーにしておらず、またタイトルにもある「冒険」をしっかり描かれている点、一度敗北して再戦する点など、本当に魅力に溢れた作品だと思います。
感動という点では、他の大長編には及ばないかもしれませんが、大人でもワクワクドキドキするし楽しめる作品、というところは素晴らしいと思います。
こんな稚拙な文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ドラえもんの魅力は他でも語っていますので、もし興味があればどうぞ(笑)